災害とアマチュア無線
私は中学生の時にアマチュア無線を始めて、いまだに続けています。しかし非常通信に加わったことはおろか、非常通信をしているところを聞いたこともありません。しかしアマチュア無線は趣味ではありますが、その特長を生かして、災害時の緊急無線で活躍している大事な手段になっています。法律上も目的外通信で唯一許可されているのが災害時の緊急通信です。
地方自治体によっては、アマチュア無線クラブと合同で防災訓練に非常通信の訓練を含めて行っているところも多くあるようです。
なぜアマチュア無線なのか
アマチュア無線は国家試験に合格して免許を持っている必要があることをご存知だと思います。また大きなアンテナ、小さなアンテナが家のTVアンテナ以外に建っているのを見てアマチュア無線のアンテナだと分かる人もいると思います。(写真は私のアマチュア無線のアンテナです)携帯電話やインターネットに対して、その通信方法のほとんどが中継を介さないため、携帯基地局(中継局)の不動作やインターネットのサーバーダウンなどによる通信の分断のような状況に陥りにくいことが特徴です。これは言い換えるとシンプルな通信手段であることを意味しているのですが、シンプルであることが災害時に有効な通信手段となるわけです。
またTV・ラジオなどのメディアについても、TV・ラジオは放送ですから一方通行です。が、アマチュア無線は電話同様双方向通話であり、なおかつ不特定多数を相手に情報を伝達できることからも非常通信に向いていると考えられます。
しかしながら弱点もあります。前述の家々にあるアマチュア無線用のアンテナや鉄塔は風に対しては相当な強さでも倒壊することはありませんが、直下型地震のような不規則な激しい上下振動に対しては弱く、無残なアンテナの姿になってしまうこともまれにあります。当然そうなれば非常通信の手段としては使えません。また、自宅でアマチュア無線を行っている人はAC100Vを使用して楽しんでいますので、停電になればやはり使い物にならなくなってしまいます。
ではどういうスタイルのアマチュア無線が災害に役立つのかということですが、
- 車にアマチュア無線機を積んで走行中などに運用している人(モービル局といいます)
- バッテリーで動くハンディタイプのアマチュア無線機を使って楽しんでいる人
- 大きな無線機とアンテナを車に積んで、見晴らしの良い場所で「移動運用」を楽しむ人(車で行ける範囲)
だろうと考えます。もちろん自宅のアンテナが健在で停電にもならなければ自宅で運用している人が最も安定した運用ができますが。
私は自宅でも現在は運用していますが、以前は3項の大きな無線機とアンテナを積んで...というタイプでした。3項のタイプをきわめている人はどのような場所でもアンテナを数分から数十分で建て、発電機も持参していますので車のバッテリーに頼ることなく運用が可能です。さらにこれを楽しむ人のほとんどはキャンプ経験も豊富で、その場所で一晩二晩過ごす準備が常時整っています。3項のようなスタイルの人は多くはありませんが1項、2項の人を加えると相当な規模になりますので、有効性のある通信手段となるわけです。
通信手段の災害時の比較を表にしてみました。
| 双方向通信 | 接続集中による通話不能はない | 乾電池の利用 | 中継機不要 | 多数に同時に情報提供 | |
|---|---|---|---|---|---|
| アマチュア無線 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ |
| 防災無線 | × | ○ | × | ○ | ○ |
| 携帯電話 | ○ | × | × | × | × |
| インターネット | ○ | × | △ | × | ○ |
| 有線電話 | ○ | × | × | × | × |
| ラジオ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
| テレビ | × | ○ | △ | △ | ○ |
以上のようにアマチュア無線は多数に同時に情報提供ができる部分においてはやや難がありますが、それ以外の項目についてはほぼ問題ないと判断できます。ただ、多数に同時に情報提供という点は、アマチュア無線人口からすれば(70万人と言われていますが)日本人200人に1人程度の割合ですから多数に同時に情報が提供できる手段とみても良いと思います。もちろん他の通信手段も年々信頼性は高くなっていますし、携帯電話はワンセグによるTV放送の受信なども可能となり、時代とともに変化しています。
アマチュア無線の中に出てきた「発電機」ですが、これが上述した災害時に役立つ道具で抜けていて、かつ、とても有効な道具です。15kg程度と重いものがほとんどなので、避難時に持って歩くのには厳しいですが、停電が長く続いたときなどはAC100V、300W程度(あるいはそれ以上)で使えますので電灯やTV、場合によってはパソコンなどには十分利用可能です。ガソリンでエンジンを回しますので音もややうるさく、排気ガスも出ます。その点を理解して使う必要があります。(特に周囲の人に対しては理解を求める必要が出ると思います)少々高価ですが別な用途を考えている人は1台持っておくと良いかもしれません。
話は逸れましたが、アマチュア無線をやっている人への過度の期待も禁物です。そのほとんどの人は災害時の運用に対して不慣れだからです。伝えるべきこと、あるいは頼まれて伝えたいことが正確に通信の相手に伝えられるかどうか、あるいはめったにアマチュア無線をやらない人は機器の操作そのものも誤る場合も考えられます。こういったことが少なくなるように、上述していますが自治体が中心となって、アマチュア無線の非常通信訓練が進んでくれればと思っています。(横浜市ではかなり進んだ訓練などが行われているようです)
アマチュア無線の本来の楽しみ方は私のように自宅から世界中のアマチュア無線家と交信して楽しむようなことですが、色々な楽しみ方が他にもあります。確かに携帯電話やインターネットが発達して、人とのコミュニケーションをとるだけが目的ならつまらなく見えるかもしれませんが、地球の裏側あるいは日本国内でもはるか彼方の見知らぬ人との会話ができることは見方をかえれば神秘的で楽しいことだと思います。アマチュア無線を始めてみたいというひとはJARL(日本アマチュア無線連盟)のサイトをぜひご覧ください。
ところでラジオ・テレビ・携帯電話などを否定するような書き方をしてしまいましたが、決してそういう意味ではありませんので誤解の無いように...。特にラジオ、テレビは災害状況を客観的に伝えてくれる非常に重要なものです。ですので車にはラジオあるいはナビゲーションと一緒にTVがついてる人も多かろうと思いますので、いつでも使えるように操作に慣れておくと良いと思います。また電池不要の手回しラジオなどもあり、携帯電話の充電もできるようですので1台あると良いかもしれません。我が家では懐中電灯などはめったに使うことも無く、今回の見直しではことごとく電池が液漏れを起こしており、散々でした。電池を使う製品は1年に一度は電池を交換することをお薦めします。
